小さな主人と二人の従者
 さっきまで両手を後ろから拘束されていたので、恐怖がまだ抜けていなかった。
 ケネスが前に来て屈み、ジュリアが巻いているストールをはずしながら腕を慎重に持ち上げた。

「うっ!」
「痛むか?ちょっと辛抱してくれ」

 早く終わらせてほしいことを願いながら、必死に痛みに耐えた。

「ううっ・・・・・・」

 ケネスがジュリアの手当てをしているときにギャレットが顔を覗かせた。

「ジュリア嬢、お風呂お先」
「きゃあ!」

 上半身が裸なので、慌てて顔を背けると、ギャレットがそっと隣に歩み寄った。

「どうして俺を見てくれないの?そんなことをされると傷つくな」

 ギャレットは嘘吐きだ。声が笑っている。

「嘘ばっかり」

 ギャレットがジュリアの顎を擽ったから小さな声が漏れた。

「ギャレット、あまりからかうな」
「可愛がっているだけだよ。とても魔獣に立ち向かった女の子とは思えないくらい」

 真剣な顔になってジュリアは無意識に見つめていると、ギャレットは頬を指の腹で滑らせた。

「傷はなくなったね。薬はまだある?」
「うん、ケネスはお風呂に入って」
「了解」
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