小さな主人と二人の従者
　ジュリアがギャレットの記憶を失っていることは間違いないのかもしれない。
　だけど、ギャレットはどうして森で初対面のふりをしたのか理由が思いつかない。

「ギャレットの記憶はまだ一度も見たことがないのか？」
「見たことがないよ」

　本当はギャレットが望んでいるのかもしれない。記憶を取り戻すことを心の中では拒んでいるとしたら、ジュリアはどうすればいいのだろう。

「何度か見たことがあるんだ」

　ケネスはジュリアをまっすぐ見た。

「ギャレットがジュリア様に話しかけているところを。だけど、ジュリア様は心を閉ざしていた」
「それは彼のことが嫌いだったから？」

　それとも彼がジュリアを嫌っていると知っていたから？

「ジュリア様に好意を持っているように見える。嘘、偽りなんかじゃない。ただ、それをどのようにジュリア様が受け止めていたのかまではわからなかった」

　ギャレットにジュリアが無力であることを言われて、余計に彼を信じることができなかったのだろう。
　自分が無力なのはジュリアが一番よくわかっていること。
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