小さな主人と二人の従者
 盗人だったとは思っていなかった。

「ガキから魔道書を取り上げて殺すぞ」

 物騒な言葉が飛び交う。

「あれがあれば、あらゆる魔法を発動させることができるからな」

 ミラベルがジュリアに小声で話しかけた。

「ジュリア、彼らがあの子を見つける前に私達が見つけましょう」
「そうだよね。どこにいるんだろう?」

 忍び足でゆっくりと歩きながら、隠れることができそうな場所から女の子を捜した。彼らに見つからないように魔法を使わない。倉庫の外にはいないとなると、中しかない。

「どこにもいないな」
「外へ行くか」
「念のために倉庫は鍵をかけておこうぜ」

 鍵が閉まって、足音が遠ざかった。すると、積んである木材の箱から小さな頭が出てきた。

「ジュリア」
「いた!」

 女の子の無事だった。ジュリアが近寄ると、声を出そうとしたので、手で小さな口を塞いだ。

「静かにしてね。まだ悪者達が外でうろついているから」

 怯えている女の子は小さく頷いて、それに従ってくれた。
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