小さな主人と二人の従者
刻印
 家に帰って、ジュリアはお風呂に入って、歯を磨いてから寝た。いや、寝ようとしているのに起きている。シャワーで全身の汗を流したのに、首や手など、汗で少しだけ濡れている。果実水でも飲んで、喉を潤そうとしたときに声がかかった。
 隣を見ると、ギャレットがジュリアを見ている。透き通るような白い肌に銀色に光る髪、吸い込まれそうな紅い瞳。美貌に見慣れたはずなのに、距離が近いからか、激しく鼓動が鳴る。

「眠れないみたいだね?傷が痛むから?」
「違うよ、果実水でも飲もうと思って。ギャレットも飲む?」

 果実水は甘く、すっと喉の奥へ通る。ジュリアが好きな飲み物で家に置いてあることが多い。

「たまには酒を飲みたい。しばらくの間は飲んでいなかったから」

 父親が酒を飲むときは外で飲むから、家には酒を一本も置いていない。

「もう店が閉まっているよ?」
「仮に開いていたとしても、わざわざ買いに行く必要はないよ。あるから」
「酒が?家に?」
「うん、実は一昨日買ったんだ。俺は酒に強いから酔うことはないよ」
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