小さな主人と二人の従者
魔法薬
 次の日の昼休みにギャレットを実験室へ呼んでいた。正確にはギャレットが実験室の前をたまたま通ったので、ジュリアが中に招き入れた。

「ギャレット、今、話ができる?」
「うん、できるよ。なーに?ジュリアちゃん」

 ギャレットの屈託のない笑顔。ジュリアはギャレットのような笑顔でなく、真剣な顔になっている。

「私に刻印をつけたのはギャレットだよね?どうして?」

 遠回しにすると、惚けるふりをされてしまいそうだから、単刀直入に刻印のことを訊いた。

「思い出したんだ」

 声のトーンが若干下がった。

「質問に答えてくれる?」

 意外なことに、ギャレットはあっさりと口を開いてくれた。

「簡単だよ。あのとき、初めて君に会って、あのまま何もしないで別れたくなかった。そうしないと、二度と会えないかもしれなかったからね。だから刻印を刻んだ」
「これを取ることはできる?」
「できたとしても、取ってあげない」

 こんなことを言われて、納得するには無理がある。

「どうして?私と再会したかったから、これを刻んだのよね?目的は達成した。そうでしょ?」

 だったら、これは不要だ。

「取り方を忘れちゃったんだ」

 ギャレットの嘘は見抜いている。
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