小さな主人と二人の従者
「だったら、他の誰かに教えてもらう」
「無駄だよ」
「どうしてよ?」

 自然と声が荒くなっていく。

「この刻印をそのままつけただけだったら、再会したときに消える。だけど、俺は少し手を加えたから」
「手を加えた?どうやって?」
「俺の血を使ったから、少し色が濃く浮き出ているんだよ」

 ギャレットはそろそろ解放してほしそうだったが、まだ話は終わっていない。

「私の知らないこと、他にもあるよね?」
「何のことを言っているの?」
「何の記憶が抜けているか。それから失った記憶のことをギャレットは知っている」

 ギャレットは深い溜息を吐いた。

「どこまで思い出したの?」

 ギャレットは話を続けたくなさそうにしている。

「知っていることを全部教えてよ」
「嫌だね。教えてあげない」

 ギャレットは頑なに口を閉ざす。

「命じるわ」

 久々に出した命令なのに、彼はそれを受け流した。

「悪いけど、その質問の返事はできない」
「だったら、せめてその理由を言ってよ」

 そこまで拒んで隠す理由を知る権利がある。

「言ったら、ジュリアちゃんは俺から遠ざかるから」

 その意味をギャレットは言おうとしなかった。

「そんなことないよ」
「絶対に拒絶する。俺をね」
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