小さな主人と二人の従者
 ジュリアは二人のことを知っている。それなのに思い出すことができず、苛立ちが増す。

「カーシー、さっき、魔女はもともと森に住んでいたことを話したよね?黒い屋敷に住むようになったのは・・・・・・」
「二人の大切な居場所を奪ったんだよ」

 それは魔法薬の完成に成功したことを意味する。

「今度こそ来たよ」

 カーシーはジュリアから視線をはずした。待っていた料理の匂いで笑みが零れる。

「思っていたより早く来たね」
「もっと時間がかかると思っていたよ」

 ジュリアとカーシーは野菜カレーを注文していて、ジュリアは甘口、カーシーは中辛だった。辛さを自分の好みに合わせて作ってもらうことができる。

「他にご注文はございませんか?」

 店員が満面の笑みをカーシーに向けている。

「ないよ」

 店員が一礼してカーシーを一瞥した後、そのまま奥へと消えた。視線を向けた意味は容易に想像がつく。

「一口食べる?」

 カーシーを見ていると、中辛も食べたがっていると勘違いされていた。

「ううん、熱そうだなと思っただけだから」
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