小さな主人と二人の従者
 自分の時計を鞄の中から出して、腕にはめた。

「少し似ているね。俺の腕時計と」

 ジュリアの時計はカーシーの時計より小さく、ロゴが違うくらいだった。

「私の時計はちょっとだけ傷が入ってしまっているの」

 以前に時計をはずそうとしたときに手を滑らせて落としたことがある。

「針は?動く?」
「大丈夫、止まっていないよ」

 時計の針は規則正しく動いている。もう一度、次の授業の時間が迫ってきたので、店を出て、学校へ戻ることにした。

「ジュリア、今度はもう少しゆっくりしようね」
「そうだね。あまり落ち着かなかったからね」

 ギャレットとぎこちなくなったままなので、どんな顔をして会えばいいのだろう。

「俺はこっちだから。またね」
「うん、それとごちそうさま!」
「いいよ、それくらい」

 カーシーは手を振りながら、階段を上って行った。

「次は・・・・・・」
「教室で授業?」
「そうだよ。急げばまだ間に合うから」

 自分が今、誰と話をしているのかと疑問ができて、前後、左右を見るが、誰もいない。

「空耳?でも・・・・・・」

 確かに耳にした。聞き間違いなどではない。

「いるんでしょ?ギャレット、出てきて」
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