小さな主人と二人の従者
 エリーの弟だったら、ケネスは元華族になる。どうやって吸血鬼に生まれ変わったのか不明だった。そのこともカーシーに話すと、深刻な表情になった。

「ケネスも今まで私に嘘を吐いていたのかな?」
「それはどうかな。彼はギャレットと違って、嘘を吐くことは得意ではないから」

 だとすると、ケネスも記憶喪失だと考えられる。それはジュリアが屋敷で願いを叶えるために実を食べたことが影響しているのだろうか。

「ケネスとも二人で話すべきかな」

 それともいっそ、黒い屋敷へ行くか。あの二人を一刻も早く救い出さなくてはならない。

「ギャレットが近くにいると、それは難しくない?」
「ジュリア、ちょっと移動しよう」

 カーシーがジュリアの腕を掴んだ。突然のことで驚いていると、冷たい風に包まれてジュリアは何度も瞬きをした。
 ジュリアとカーシーがいる場所はすでに隠し部屋ではなく、自習室にいた。どうしてカーシーが移動したのか、ジュリアには理解できなかった。

「どうして?」
「気配が近づいてきたからね」
「誰の気配?」
「誰かまでは特定できなかった。ここに移動したのはこの時間は生徒がほとんどいないからね」
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