小さな主人と二人の従者
「ケネスはいつから吸血鬼だったの?」
「思い出したんだな」

 やっぱり生まれたときから吸血鬼ではなかった。

「俺も思い出したことがある。俺に姉がいたこと」

 記憶喪失になっていたのはケネスもだった。
 ケネスが記憶を取り戻したのはほんの数日前、ギャレットに頼まれて(いや、強引に押しつけられて)買い物へ行ったときに長くて綺麗なピンク色の髪の女性を見て、自分に姉がいることを思い出した。それとケネスの姉はウィルーーーージュリアの兄と結婚を考えていた。そうなると、ジュリアはケネスの義理の妹になる。

「驚いたな。俺まで記憶喪失だったなんて。ジュリア、自分がどうして記憶喪失になっているのかわかっているか?」
「屋敷で『白輝の実』を口にした代償だよね?」

 ジュリアは以前にカーシーから教えてもらっていたので、その理由をわかっていた。ケネスは薄々ジュリアがそのことに気づいているのではと考えていたので、今まで何も言わなかった。

「そうだ。それと俺は何者かに吸血鬼にされた」
「何者か?その記憶はまだ?」
「そこまでは思い出せない。ただ、俺は魔女に殺されかけたんだ」
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