小さな主人と二人の従者
 その頃のジュリアは大切な者達が苦しめられているのに何も力になることができない自分に腹を立てていたに違いない。

「僕は黒猫になって屋敷へ入ることに成功して、エリー達を助けようとしたんだよ。だけど、そのときに誰かに薬を嗅がされて眠ってしまったから」
「モナを眠らせたのは俺だよ」
「ウィルお兄ちゃん・・・・・・」
「侵入者がいることに気づいた魔女に命じられて・・・・・・」
「僕、あのときはもう駄目だと思ったんだよ」

 だけど、ウィルはほんの僅かな時間だけ正気を取り戻したのだ。また操られたときの自分に戻ったら、モナを傷つけてしまうと考えたウィルはモナが屋敷にいた記憶を忘れる忘却魔法を使った。

「思い出したのはジュリア達がウィルとエリーを助けに行こうとしたときかな」
「ちょっ、それって・・・・・・」

 ウィルの話によると、忘却魔法をかけたときに激しい頭痛に襲われて、力が弱まっていて、長続きしなかったらしい。忘却魔法をかけたら、自然に思い出すことはない。

「だから急いでジュリア達を追いかけたってことになるかな」
「それにしても、やっと自由になることができたわね。ウィル」
「そうだね、エリー」

 エリーとウィルは微笑んでいて、手まで繋いでいた。それを見ていたジュリア達は溜息を吐いた。
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