小さな主人と二人の従者
「ちょっと気になっていて・・・・・・。エヴァンやセリーナ先生は昔から私の家によく来てくれていたから、私達が兄妹であることも知っているのに、記憶喪失になってから一度もウィルお兄ちゃんについて話をしなかったから、どうしてなのかなと思って・・・・・・」
「エリーになりすました魔女が言った嘘を他の誰かから聞いて信じたのだろうな。セリーナ先生が何度か屋敷へ行っていたみたいだが、そのときはまだ魔女が屋敷を黒く変えていなくて、居留守をしていたらしい。そうウィルから聞かされた」

 外国へ行ったことをジュリアが寂しがっていると感じて、誰も彼らのことを話さなかった。ジュリアの様子がおかしくなったのはそのときと重なっていたから、本当の理由を知る者はいなかった。

「昨日、ギャレットから・・・・・・何か聞いた?」

 ケネスとギャレットは同じ部屋だった。ひょっとすると、何か話でもしたのではないかとジュリアは考えた。

「俺を吸血鬼にしたのはやっぱりあいつだった。俺が記憶喪失になったのは大怪我を負ってしまったからで、誰にも忘却魔法を使われていなかった」
「死にかけたケネスを助けるためにギャレットはあなたを吸血鬼にしたの?」
「ギャレットはそのときは俺が記憶を失っていることを知らずにいた。俺を放置しておけば、あの二人を助けることが余計に難しくなり、さらにジュリアが悲しむと思ったから、俺を吸血鬼にしたようだ」
「吸血鬼にしてから、ケネスの記憶がないことを知ったのね」
「そうだ。記憶喪失になってからでも、こうして妹と再会できるとは思いもしなかったな」
「ウィルお兄ちゃんとエリーは結婚していたの?」
「していたな。だからウィルとエリー姉さんはこの屋敷に住むようになったんだ」
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