小さな主人と二人の従者
 ジュリアが話し終えると、ウィルはしばらく黙って目を閉じていた。

「じゃあ、俺やエリーのこと、他の者達のことも忘れていたの?」
「忘れていた。中には記憶にある者達もいたよ」

 ジュリアが記憶喪失になる前にウィルにぶつかった記憶はあったけれど、記憶を失った後のジュリアは男性とぶつかったことは忘れていなかったものの、その男性が自分の兄だったことを忘れてしまっていた。

「俺のことを全て思い出した訳ではないんだね?エリーのことも?」
「まだ思い出していない」

 ジュリアが小声で言うと、ウィルは鍵がついている箱の中から何かを包んでいる布を取り出した。テーブルの上に置いたときにガラスがぶつかる音がして、ウィルは布の結び目を解いて広げると、粉々になった鏡が入っていた。

「ウィルお兄ちゃん、これは?」
「これは『虹色の鏡』だよ。ジュリアが割った鏡」
「本当に!?」

 よく見ると、鏡はジュリアの顔を映していなかった。魔力は少しも感じない。壊したから力はなくなっていた。
 この鏡をどこで手に入れたのだろうかと疑問が出てきた。

「この鏡も実も、魔女が用意したものだよ」
「実はどうやって?あれを手に入れることはかなり難しいのよね?」
「正確に言うと、『白輝の実』を手に入れたのは魔女の手下だったんだ。傷だらけになりながら手に入れたのに、魔女はそれを奪い取って用済みだと、その手下を消し去ったんだ」
「嘘・・・・・・」
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