小さな主人と二人の従者
「学校の外で本を読んだのは初めてだね」
「そうだね。どの本にしようかな?ここ、広い上に本の数が多そう」
「ジュリア、君が好きそうな本があるから、それを一緒に読まない?」
「うん、読む!」

 書店でカーシーが買った本をコーヒーハウスへ移動して、カウンター席に座って、飲み物を注文した。
 受け取った飲み物を横に置いておいて、カーシーがジュリアに本を読み聞かせていた。ジュリアは眠る前に読んでもらう子どものような気分で聞いていた。
 
「俺が一日中、ジュリアと祭を楽しみたかったな」
「五時に会う約束だからね。そろそろ行くけれど、その前に、はい!」

 ジュリアがカーシーに渡したものはビスケットがたくさん入っている箱。カーシーが百貨店で支払いをしているときにジューンが好きなお菓子だと聞いた。これはカーシーも好んでいて、たまに二人で食べているお菓子。
 このお菓子はジュリアも昔、一度だけ食べたことがあり、バターをたくさん使っていて、ちょっと贅沢な風味が特徴となっている。
 ジュリアは日頃の感謝の気持ちにこっそり買っていた。
 
「これを買ったから、鞄がさっきより膨らんでいたんだね」
「そうなるね。ジューンと仲良く食べてね」
「うん、ありがとう。この本、また読みたくなったら、俺のところへおいで。いつでも聞かせてあげるから」
「私、子どもみたい。じゃあね!」

 一人になったカーシーは注文した飲み物を飲んで、誰にも聞こえないように呟いた。

「ジュリアを子ども扱いしていないのにな。まだ・・・・・・もう少し先か・・・・・・」
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