小さな主人と二人の従者
「誰もいないのかな?」
「いるよ、奥で物音が聞こえている」

 耳を澄ますと、誰かがいることはすぐにわかった。
 どうして扉が開かないの?生徒は立ち入り禁止とか?
 それだったら、彼らがわざわざ案内することはない。

「ひょっとして隠し扉でもあるの・・・・・・ちょっと!」

 二人して猫背になって声を殺しながら笑っている。

「ははっ!」

 ケネスがギャレットの背中を軽く叩いている。

「意外と面白かったね。苦戦しているジュリア嬢の姿」
「ひどいよ!ずっと笑っていたの?」
「笑ったのはさっきだよ」
「さっさと開け方を教えてよ!」

 やっぱり二人してジュリアで遊んでいたのだと思うと、当の本人は笑って誤魔化すことは無理だった。
 ギャレットがドアノブに掛けている鈴を鳴らして、扉を開けた。

「そういう開け方だったの。もう!無駄な時間だったよ!」

 中に入ると、ケネスやギャレットと同じくらい赤みがかった黒髪で瞳が薄茶色の美しい青年がこちらに来た。

「まさかまた来てくれるとは思わなかった」
「そういう気分だった」
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