小さな主人と二人の従者
「はい、あーん」
「むぐっ!」

 カーシーがジュリアの口の中に焼き菓子を唇に押しつけた。
 しばらく頬張って、カーシーにいつからここにいたのか訊いた。

「今日は授業が終わってからここにいたんだ」
「ここで働いている子達と話をしていたの?」
「そう。それに誰か来ないかと待っていたら君達が来た」

 ジュリアはここにいる妖精達を抱きしめたかった。
 記憶喪失だとばれないように、何とか情報を引き出すことはできないだろうかと考えていた。

「何を考えている?」

 いつの間にか距離を縮められていた。
 顔に書いていたのだろうかと言葉が出てこない。答えないジュリアにカーシーは別の質問に変更した。

「時折不安そうな顔になっている。俺には言えないこと?それとも俺以外にも?」
「今は・・・・・・言えないの」

 彼を敵か味方か判断するにはもう少し時間が必要だ。
 絞り出すような声で言うと、それ以上質問しなかった。

「わかった。ジュリア、気長に待つことにする。困ったことがあれば、ちゃんと言わなきゃ駄目だよ?」
「うん、そうするね」
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