小さな主人と二人の従者
 ギャレットに背中を押されながら厨房から出て、誰もいないことを確認してから両腕を天井に向かって伸ばした。焦りと緊張感から解放されて、やっと落ち着くことができた。

「さっきも笑いそうになったな」
「本当だね」
「どうして出口は普通の開け方なの!?」

 入るときも出るときもやり方が違うとわかって、ジュリアは納得できなかった。

「まぁ、ジュリア様の気持ちはわかるな」
「俺達がいなかったら、カーシーに怪しまれていたところだね」

 二人が横に並んでくれたから、ジュリアの姿はカーシーに見られることはなかった。

「ギャレット、どうしてさっきは呼び捨てだったの?」

 これはさっきからジュリアが気になっていたこと。

「下手に記憶喪失であることを広めたくないでしょ?いつもの呼び方でも上手く説明することができるけど、突っ込まれると面倒でしょ?」

 面倒な上にジュリアは上手く誤魔化すことができそうになかった。

「俺達三人だけだったらいいとしても、いつ、どこで、誰が聞いているかわからないから、学校にいる間だけはやっぱり名前で呼ぶべきだな」
「それもそうだね、学校にいるときは名前で呼んで」

 二人が了解の返事をしてくれて、ジュリアは頷いた。
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