小さな主人と二人の従者
 何か持っていれば、躊躇うことなく彼らに渡しているのに、こんなときに限って持っていなかった。いつもどこかへ出かけるときはお菓子を持って行くのに、昨日で食べ切ってしまった。

「ごめんね・・・・・・」
「そう。だったら仕方がない」

 痛みに苦しんでいる顔から歪んだ笑みを浮かべながら瞳の紅色から黄金色に変わって、ジュリアは一瞬で顔面蒼白となった。

「まさか・・・・・・吸血鬼?」
「そういうことだ」

 青い瞳をした青年も同じように瞳の色が変わっていた。
 黄金色は吸血鬼の特徴の一つ。力やスピードも彼らが圧倒的に上であることはわかっていた。

「嫌なことの次は良いことがあるものだね。でしょ?お嬢ちゃん」

 幼い子どもに話しかけるように優しい口調だが、瞳はこれっぽっちも笑っていなかった。

「嬉しいな。わざわざ餌から俺達のところへ来てくれるんだ」
「ち、違う・・・・・・」

 ジュリアがすぐに首を横に振ると、青年達は口を開けて、鋭い牙を覗かせた。ジュリアが悲鳴を上げると、青年達はくすくすと笑い合っている。
 この最悪な状況から逃れることができるなら、何だってしたかった。
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