小さな主人と二人の従者
 瓶の中にスティックと香水が入っている商品を手に取って首をかしげていると、ミラベルが説明してくれた。

「これは火を使わずに置くだけで、優雅な香りを部屋中に拡散し続ける効果があるのよ」
「とても安全ね」

 このやり方は簡単だった。瓶のキャップをはずしてから中詮もはずして、キャップを再度つけてその穴にスティックを差す。それぞれ見た目、香りの好みや目的で商品を買う。ジュリアは目的で選ぶことにして、リラックスできるアロマキャンドルに注目した。隣にある安眠用の商品は不要だった。男が同じ部屋にいるのも関わらず、いつもぐっすりと眠っている。起きているときは心身ともに疲れることがあるので、商品の香りを楽しみながら慎重に選ぶことに決めた。
 そして数分かけて買うことを決めた香りはラベンダー。店員のところまで歩くと、先にミラベルがいくつもの商品を買っていて、それらが入った袋を受け取ったときにジュリアの存在に気づいて振り返った。ミラベルが微笑んだので、ジュリアも同じように微笑んで外で待っているように伝えた。会計を済ませて店の外へ出ると、ミラベルが空を眺めていた。
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