小さな主人と二人の従者
「どうする?ジュリア」
「後から選ばない?」
「そうね。食後に呼びます」

 店員は返事をしてから、受けた注文を復唱して、去って行った。

「さっきの話に戻りましょうか。カーシーは夢族で夢を見せることができるのは知っているよね?」
「うん、それはどんな夢でもだったよね?」

 夢を見せるときはいつでもできるようだ。

「そうよ。眠ることができないときに彼や他の夢族に良い夢を見せてほしいと頼まれることが何度かあるみたい」

 それだったら、夢族は周囲にとってとても頼りになる存在だ。

「でも、悪夢を見せようと思えば、それも可能なのよね?」
「そうね。ある日、彼がジュリアに夢を見せようとしたときに手を振り払ったの。忘れたの?」
「忘れちゃった」

 彼は嫌な夢を見せようとする人に見えない。
 だけど、それはジュリアが彼のことをそう信じたいだけなのかもしれない。

「だいぶ日が経っているから、忘れても無理ないわね」

 それは違うだろう。
 忘れているのは記憶喪失だからであって、時間は無関係。
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