小さな主人と二人の従者
「そんなに怖がらなくてもいいだろう?できるだけ痛くしない」
「来ないで・・・・・・」

 前後を挟むように逃げ道を奪われて、冷たい指が項に触れ、頬を舐め上げられた。ぞっとして青年達を見ると、さらに笑みを深めた。香りに酔っているのか、うっとりとしている表情にも見えた。

「甘い香りがするね」
「どうする?一瞬で終わらせるか?」
「それだとつまらない。ここにはもう誰もいない。時間をかけて味わってあげよう」

 背筋が凍りついた。
 どっちに転んでも得することなんてない。声すら出すことができないジュリアを置いて、二人はどこに牙を貫こうかと鼻や舌を肌に押しつけながら探っている。

「本当に良い匂いだな。一度吸ったら止めることが難しそうだ」
「駄目だよ、この子は生かしておかないと。全部飲み干したら、二度と味わえなくなる」

 警鐘が鳴り響いて、頭がどうにかなりそうだった。
 頭を手で押さえながら、ひたすら逃げる方法を考えていた。
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