小さな主人と二人の従者
 ケネスの指摘をできることなら跳ね除けたかった。

「俺も抱きしめてあげる」

 膝を抱えて座っているジュリアを抱きしめようとしたギャレットを止めて、ケネスはジュリアの正面でしゃがんで両耳を手で塞いだ。

「こうすれば雷は聞こえないだろう」
「俺がやるからケネスはどっか行って」
「お前は単に怖がっている表情をじっくりと目に焼きつけたいだけだろ?」

 それに対してギャレットは一切否定しない。

「だって可愛いから。今は顔を隠しているけど、きっとそそられるだろうな」

 恍惚としたギャレットの表情にジュリアとケイティを除いた者達は深い溜息を吐いた。

「良い雰囲気だから、怪談話でもしない?」

 ギャレットはさらに恐怖を煽ろうと、怪談話を提案した。

「もうやめてやれよ。ケイティの震えが激しくなった」

 ジュリアはケネスにしっかりと耳を塞がれているから、何も耳に届くことはなかった。
 それから一時間以上経過して、やっと大雨が小雨になった。雷が鳴らなくなってジュリアとケイティは安堵の溜息を吐いた。

「さて、そろそろ行くか。ケイティ」
「二人とも待って!」
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