小さな主人と二人の従者
 玄関に置いてある二本の傘を外へ出ようとする二人に渡そうとすると、ギャレットがジュリアの手から傘を抜いて一本だけ渡した。

「どうして?」
「二人にはこれでいいでしょ?相合傘」

 笑顔のまま渡すギャレットにルースは顔を赤くする。

「てめっ!ふざけるな!」
「この傘は大きいから濡れる心配はありません。ルースは私と傘の中に入ることは嫌ですか?」
「嫌じゃないに決まっているだろう!ジュリア、これは後日返すからな。邪魔したな」
「わかった。気をつけてね」
「お邪魔しました。今日はいろいろとありがとうございます」

 ルースが傘を持って、もう片方の手はケイティと繋いでいた。ジュリアは自然に寄り添う二人を見て、ちょっぴり羨ましくなった。

「行っちゃった」
「俺達も手を繋ごうか?ジュリア嬢」
「断る」
「そんなはっきり言われると傷つくな。これはその辺の餌を貰わないとどうにもできないな。きっと」

 いつまで彼にこんな脅しを受け続けるのだろう。
 もう雨は直に止むだろうというジュリアの期待はことごとく裏切られることになった。夜になってから再び大雨が降って雷が鳴った。

「ジュリア嬢、もう寝るの?」
「寝るの」
「おいでよ」
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