小さな主人と二人の従者
 ジュリアは崖に立っていて、一歩でも前に進んでしまえば、海へと落ちてしまう。
 焦るジュリアに止めを刺すようにジャンプして上から鋭い爪で引っ掻いた。避け切ることができずに服が破けて大きく二本の線を肩に描いたとき、ジュリアの悲鳴が木霊した。
 持っていた別のナイフを魔獣の足に突き刺してから全身が痺れる薬をかけて、隠し持っていた攻撃用の札を投げると、その力の大きさに魔獣は大ダメージを受けながら海に落ちて跡形もなく消えた。
 肩から出血していて、あまりの痛みに触れることすらできなかった。少しでも痛みを和らげようと回復の魔法を使った。左右をふらつきながら森へ戻ると、青年達が距離を縮めていた。

「やっぱり怪我をしているな」

 痛みに顔を歪ませていると、先程止血をしようとしたストールを青い瞳の青年がジュリアの肩に縛った。戦闘中に傷ついた頬をもう一人の青年が舌先で触れた。後退しようとしたが、そこにさっきの欲望はなく、餌にされないことを悟ってただじっとした。
 じろじろと上から下まで見られて、目を合わせないように視線を泳がせた。

「まさかこんなガキに助けられるとは思わなかった」
「私も夜にもなっていなかったのに、吸血鬼二人に遭遇するとは思わなかった」
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