小さな主人と二人の従者
「結局、殴られなかった」
「ギャレットは心配していたんだ。ジュリア様を」

 ケネスを見てからギャレットを見ると、顔を背けられた。もう一度怒ろうかと口を開きかけて閉じた。

「彼女達、たっぷり説教を受けているといいね」

 あの様子だと反省する気はなさそうだ。

「よくあんなことができるな。情けないな」
「恨みでもあったのかな?」
「買っていたらしいよ。恨み」

 知らないはずの情報をギャレットは知っていた。

「どうしてそんなことを知っているの?」
「別の店員が言っていたんだよ。彼女の容姿が妬ましくて店に来る度に彼女を困らせていたみたい」

 補足すると、彼女は男性のお客様に人気で、前から目をつけられていたようだ。
 素直に羨むくらいだったら、まだ可愛げがある。それなのにあんな騒ぎまで起こして自分達に注目を浴びせたかったのかと彼女達に対する怒りは強まった。

「その店員もすぐにあの場に来ないといけなかったのに!」
「彼女はさっき店に来たばかりだったよ。それで俺が事情を話したら、そう教えてくれたんだよ」
「そうだったの」
「他の客達は騙されそうになっていたから、ジュリア様が彼女の無実を証明してくれたことを感謝していた」

 ケネスに肩を軽く叩かれながら、帰る道を歩いて行った。
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