小さな主人と二人の従者
 約束していたものは花柄の上品なテーブルクロスだった。テスト前にセーラ市で彼と偶然出会ったときにこの話を持ちかけられたようだ。

「いつ買いに行く?」

 彼と会話をするときは返事を返すことが遅くなってしまう。

「最近は忙しいから、また時間が空いたときにお願いするね」

 これ以上この話題を伸ばすと苦しくなってしまうと考え、別の話に変えることにした。

「ところで、何か本を借りるの?」
「どうしようかな、静かなところで本を読もうかと思ったから。良かったら、一緒に読まない?」
「いいよ。今ね、何か面白い本はないかと探そうとしていたところだったの」
「それは?」

 カーシーはジュリアの左手に持っている本に目を向けた。

「これは恋愛小説。前からこの作家の本を読みたかったの。カーシーはどんな本を読むの?」

 その質問に答えず、ただ黙ってじっとジュリアを見つめている。もしかして、記憶喪失になる前の自分は彼がどんな本を読むのか知っていたのかもしれない。
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