桜涙


 
 翔汰はそう言って私を軽々ともちあげた。


 「ありがとう…」


 「いいって事よ。それよりしっかり掴まっとけよ。」

 
 「うん。」


 翔汰は私をお姫様だっこしたまま駅内を走り抜けた。


 うまいことに人の間を通り抜け気がついたらもう駅の外だった。


 「ありがとう。もうおろして。」


 「めご迷子になりそうだから無理-。」


 「大丈夫だって。」 


 「墓までは俺が連れて行くから。」


 「もーわかったよ。お任せします。」


  そう言うと翔汰は私をお姫様だっこしたまま歩き出した。


  周りの視線がすごくわかる。

 
  猿が最後の一本のバナナを見ているような感じに思えてきた。


  でも、翔汰の腕の中は心地よく眠ってしまいそうだった…




 
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