桃色☆クローバー
麻紀のお喋りが延々と続くなか三階にまで響いてくるすごい歓声が聞こえてきた。
どうやら一階で何か起きたみたいだ。
「来たんだぁ〜」
「え?来たって何が?」
一階から聞こえてくる歓声を聞いて麻紀がポソリと呟いたので尋ねてみた。
「ん?二年の王子様達だよ」
おうじ?
何それ?
アタシは眉を歪めて麻紀に無言で説明を促すと
「すぐ来るからわかるよ」
と言われた。
何のこっちゃ?
麻紀の言葉の意味を理解出来ないでいると段々歓声が小さくなっていったのに気付く。
王子様が来るって事かな?
なんとなく理解しだしたアタシは麻紀に聞いてみた。
「今歓声を浴びてる王子様が三階に来るってこと?」
「ふん。ほお〜、ばぼぜえぐんが―――」
帰ってきた返事はうん、そうだった。
麻紀は定食のハンバーグを口いっぱいに頬張り話すもんだからその部分しか聞き取れない。
「へぇ〜」
疑問が解けたアタシはもぅその話に興味がなくなって目の前のお弁当に集中した。
たこさんウィンナーを先に食べるか最後に取っておくかで悩む。
むー。
「あれ〜、桃ちゃんじゃん!」
「ふぁ?」
名前を呼ばれて顔を上げるとゆる〜く笑ったしげくんがいた。
「しげくん、こんにちはぁ〜」
アタシは呑気にあいさつするとまたお弁当に視線を戻してたこさんウィンナーを見つめて悩む。
「へぇ。弁当なんだぁ」
………………
ハッとした。
昨日耳元で聞いたあの声をまた聞いてしまったから。
きっとこの声は…
アタシはゆっくりと顔を上げてその人物を探そうとした。
でも探す必要はなかった。
アタシの目の前にはその姿があったから。
一気に胸がドンドンって高鳴りだして顔が強張る。
会いたくなんてなかったのに。
出来ればもう二度と会いたくなかったのに。
「自分で作った……わけないか」
上から見下ろされる。
きれいなグリーンの瞳に見つめられてアタシは動けなくなった。