桃色☆クローバー
「ん?違うよね?桃自分で作ってるもんねー?」


へ?


麻紀の声でその瞳が逸らされてアタシは自分を取り戻す。


あ、危ない!


吸い込まれちゃうかと思った!!


「へぇ、料理できるんだ」


目を合わせたらヤラレル!!


戻ってきた視線を咄嗟に避けてお弁当に逃げた。


ふぅ。
危ない。


お弁当に視線を送っていると横から手が出てきてアタシのたこさんを掴んでいった。


え?


お弁当箱から消えたたこさん。


顔を上げると先輩がたこさんを口に頬張るところだった。


「アタシのたこさんっ!!」


もごもごする先輩。


アタシの叫びも虚しくたこさんは先輩に食べられてしまった。


アタシのたこさん……


食べるのが大好きなアタシ。
今日は寝坊しないで作ったのに。
たこさん作ったのに。
楽しみにしてたのに。

食べられちゃったぁ…


もごもごする先輩をキッと睨む。


食物の恨みは怖いんだから!

許さない!


心の底から憎いと思った。


いつもは麻紀に横取りされても怒らないアタシだけど何故か今はカンカンに怒りが込み上げてくる。


「うまいじゃん♪」


先輩はたこさんをゴクンと飲み込むとそう言ってアタシの隣の席に腰掛けてアタシのお弁当を見つめた。


う、うまいじゃん?


そんな事どうでもいい!


アタシのたこさん返せぇ!


心の中で叫んでみたもののこの悲痛な叫びが聞こえるはずもなく先輩はアタシのお箸を使って今度は卵焼きを掴んでいた。


それを見てアタシは慌てて先輩からお箸を取り上げた。


「アタシのお弁当っっ」


力一杯叫ぶと先輩は顔を上げてアタシをみた。


ドキンッ


うわぁ!
目が合っちゃった!


慌てて逸らそうとするけど先輩の瞳がそれを許してくれない。


逃げられない。


そう思った。


先輩はただ無言でこっちをみている。


アタシは逸らすに逸らせないでいた。


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