桃色☆クローバー
ドンッッ!!


「ウキャッ」


「おっと」


下を向いて走ってたせいで誰かにぶつかってしまった。

転ぶと思ったけどアタシの腕を掴んで支えてくれた人に引き寄せられる。



あ………



アタシの身体はどうしてこうも敏感に一人の人を感じ取ってしまうんだろう。


引き寄せられた瞬間にアタシの嗅覚を刺激する甘い匂い。

先輩…


引っ張られて先輩の胸に身体が傾いた所為で抱き付くような状態になってしまったことにびっくりして顔を上げるとやっぱり先輩で、先輩も少し驚いた顔をしていた。


あ、目が合っちゃった。


目が離せなくなる。

その瞳に捉われて動けなくなり時間が止まってしまったようで足元が歪む。


「先輩…」


アタシがそう呼ぶと眉がピクリと動き目を細めたのがわかった。

なんか、不機嫌?


目を合わせたまま停止していると頬に体温を感じてはっとした。

さらに目を細めてアタシを見てくる。

でも視線は交わることはなく。

アタシの目元を拭う先輩の手。

顔が熱くなる。


「きれい」




…え、



今なんて…



「お前授業は?」



「へ?」



手が離れて顔を背けて言われた言葉が冷たく感じて戸惑う。

急に空気が変わるから対応できない。

「授業中だろ?」

「え、うん。」

「何、いじめでも受けてんの?」

「はい?」

「泣いてるから…」

あ、あぁ。

「違うよ。」

「ふ〜ん。つかちょっとこっち来い」

「え?ちょっと何すんの?!」

まだ掴まれていた手を引っ張られて慌てて手を振り払うけど前回動揺意味無く、力強い手はびくともしない。

素直に付いていく気も無いからジタバタ暴れてみるけどやっぱり意味無くて歩きだす先輩に引きずられるしかないアタシ。


なんでこの人はこう強引なんだろ!!?


「いやだ!離してっ!」

「馬っ鹿!静かにしろ」

…なるほど!

アタシは息を胸いっぱい吸って、


「助けてぇ!!!」

大声で叫んでやった!


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