桃色☆クローバー


アタシはそれがどうしようもなく苦しくて体中が悲鳴を上げてるみたいだ。




櫻田薫子が嬉しそうに聖に話し掛けている。


聖の頭に顔を近付けて耳打ちする姿は女の子らしかった。


不覚にも可愛いと思ってしまう。


きっと女のアタシが可愛いと思っちゃうくらいだから男の人から見たら尚更なんじゃないかな。


きっと聖も嬉しいんだろうな。








………。










なんでこんなに苦しいのかな?


わかんない。


キスされたからかな?


それとも櫻田薫子が相手だからかな?










アタシはやっぱり何処までも意地っ張りで、そして臆病だ。



もう答えはすぐそこにあるのに、

どうしても認められない。



認めて余計に苦しくなるのが怖くて


自分の気持ちから目を背けることしかできない。






弱虫なアタシ。











「桃?」








頭上から聞こえてきた声によって、自分が俯いていたことに気付かされた。



と、同時に視界がぼやけて頬に冷たさを感じた。




そこでやっと自分が泣いていることに気付く。




「桃?」





麻紀が小さな声でアタシの名前を呼んでいる。







アタシはその声に顔を上げられずに俯いたまま「トイレ」とだけ呟いてその場を後にした。







足早にドアに向かう。







誰かと肩がぶつかったけれどアタシは止まる事無く俯いたまま小さく謝罪して通り過ぎた。








泣いているところなんて誰にも見られたくない。








櫻田薫子が嬉しそうに笑っているなかで、泣いてる自分はとても惨めだった。




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