ツラの皮




別に高遠にとって私は特別でもなんでもない存在なんだよね。



たまたま電車で肩を貸したのを切欠に、穂積クンという思いもかけない仲介者がいてたまたま親しくなった程度の。



そしてたまたま引っ掛けるのに丁度イイところにいたから、ついでみたいに性欲処理に抜擢したくらいの。













どうやって家に辿り着いたのか定かではない。



現状を把握すればするほど混乱していく思考を持て余し、バックも上着も投げ捨てて、リビングのソファーでぼーとしていた。




玄関で「ただいま」という声がして、私の投げはなった荷物を手に母親が怪訝な顔で現れた。




「こんなところで何をぼーっとしてるの。可笑しな子ね。」




女傑の名に相応しい母の顔に私の緊張がプチッと音を立てて切れた。
















「ど、どーしよお母さん!私、高遠が好きかもしれない!」








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