ツラの皮






事の起こりはこの間のマージャン会だった。








さすがのアイツも“あんなこと”をしでかした直後で些か狼狽している風だったが、

根本的に単純というか感覚がズレているというのかゲームが始まると直ぐにそちらに熱中し始めた。



深夜にインターバルがあって、麻生がコンビニまで飲み物の買出しに出かけ、

タチバナは「休憩」と言うなりキッチンにいきなり平伏し鼾を掻きはじめた。






鈴は牌で一人遊びに夢中で、


俺は壁にも垂れて見るとは無しに牌を繰る指を見ていた。




頭から足の先まで『モデルです』と言わんばかりの女の指に比べ、なんともチンチクリンな手だ。


ふにゃらとしている分、指が短く見えて、全体的にちまっとして。


一体何歳児の手だ、とからかってやりたくなるような。







でも俺は意外にもその指が嫌いではない。







攻め立てられる度に、許しを請うみたいに俺に縋りついてきた小さな手。






不意に思い起こされた記憶に熱が迫り上がってきて俺は慌てて缶ビールを煽った。




< 113 / 403 >

この作品をシェア

pagetop