ツラの皮
薄く開いた扉から躊躇いがちな顔が覗く。
傾いた肩から零れ落ちる絹のような黒髪。
俺を捕らえた二対のトパーズがにわかに煌き、石膏のように滑らかな白い頬にほんのりと赤味が指す。
―――一瞬泣きそうに眉を寄せ、堪えるように視線を落とす。
果然、俺の無表情を捕らえた女は、痛いみたいに竦んで、長い睫を弱弱しく落とした。
………ああ。
それを見て俺は急速に平静を取り戻した。
「『よお、久し振り。』」
―――驚き。弾かれたように顔を上げる。
女は目を見開き驚いたような顔を上げた。
「『尾瀬監督の映画以来、…で、また尾瀬監督の映画で一緒になるなんて奇遇だな。俺にとっちゃアレが初仕事で思い出深いけど、……オマエは当時から人気女優だったもんな。現在も日々栄進しているようで、菅原雪乃サン。』」