ツラの皮




「ふーん。意外と冷静だったね。」




彼女が去った部屋で麻生が呟く。



俺を覗き込む目にはありありと興味が滲んでいる。


コイツ、俺をモルモットか何かと勘違いしてないか?



俺はふんっと顎を聳やかした。





「いつまでも引き摺ってるかよ。つか、割り切ってたさ、ずっと前に。」


「割り切ったって忘れたとは限ンない。だろ?」







割り切ったって忘れたとは限らない。





戻りたいと思ったわけじゃない。


戻れるとも思わなかった。


木っ端と砕けたのは関係以上に俺の抱えていた想いの方だ。


それを掻き集めてみたところで修復はもはや不可能だと分かっていた。






しかし忘れることはなかった。





だからこそ享楽だけを求める恋愛にかまけて、仕事に没頭したのだという自覚もあった。





だけど今更、そんな事は本当にどうでもよい。


そう思えるようになったのはつい最近なのだが・・・。


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