ツラの皮
忘れたわけじゃない。
だが、今は俺の関心を鷲掴む事柄があって、過去の古傷を眺めて干渉に浸っている余地などないのだ。
時間を思い出した俺は対外的には余裕を装いつつ、内心では焦燥を持て余しながら踵を返した。
「あれぇ?なんだかんだ言ってやっぱ気にしてる?今から追いかけるの?」
「んなわけあるか。」
珍しく見当違いな麻生に否定を入れる。
俺はオマエが思っているほど後ろ向きじゃない。
というか、すこぶる前向きだぞ!
……って、
何か最近、頓にアイツの影響を受けているみたいでなんなんだが……。
「週末、呑んでるときにたまたま尾瀬監督と出くわしたんだよ。で、挨拶しに行ってる間にアイツに逃げられた。俺の居ない間にミカと話したらしくて。……ま、ミカは何も言ってないって言い張ってたけどな。」