ツラの皮
「ふうん?高遠の悪事でも吹き込まれたかな?……って、鈴ちゃんにしてみりゃ今更でしょ。本人、貶されたんだとしても口喧嘩なら負けそうな気がしないし。」
だよな、と俺も溜息を吐く。
原因がミカにないとすると思い当たる節が一つだけある。
「察するところ強引に迫ったんじゃないの、高遠。鈴ちゃんって流されやすいけど動物的本能で行動する派だから、身の危険を感じて逃げたんだぁー。」
麻生のゲラゲラ笑う声に、俺はぐでっと壁に凭れた。
そうなのか、やっぱ。
この前ははっきり言って弱味に付け込んだようなもので、アイツにしてみても殆ど勢いに呑まれたカンジだった。
だから逃げたいというのなら、逃がしてやるつもりだった。
ただ、俺の願望は願望として伝えておく。
そうでなくては望みはいつまでたっても望みのままだ。