ツラの皮
落ち着くと少しだけこの珍妙な生物に興味が沸いた。
歳は同じくらいか俺の方がやや上か。
朝帰りたぁ、カレシの家へでもお泊りか?
そりゃなさそうだな、と即座に否定したのは、職業柄化粧を見る目があるからで。
崩れかけの化粧は、昨晩落としたものでも今朝慌てて施したものでもない。
しかも目の下に薄っすらクマ。
服も逢瀬にしちゃ色気のないスーツで、残業というのが妥当な推測だ。
化粧は減点だが、素材はそう悪くない。
見るからに柔らかそうな頬は木目細やかなもち肌で状態さえ良ければ化粧ノリがよさそうだ。
唇もいい具合に厚みがあって、口紅が良く映えるに違いない。
気の済むまで寝かせてやろうと思ったが、最寄の駅が近づいてきて起こすことにした。
『おい。』
寝起きがいいのか悪いのか、瞼は思いのほか直ぐ持ち上がったが、寝ぼけた顔がぼんやりと俺を見詰める。
『キレイな貌』
天使と遭遇している夢だとでも思っているのか、ほにゃっと笑う。