ツラの皮
『ちが、ごめ……』
『ひょっとして業とか?俺に気があるとか?』
面白かったんで思わず突いてみた。
すると案の定女は謝るのをそっちのけに眉を吊り上げた。
怒鳴り散らすつもりで口を開きかけ、アナウンスの声に一駅乗り過ごしたことを知った女は絶叫とともに開いたドアから一目散に飛び去った。
俺の存在などすっかり忘却した顔で。
呆然とするべきか憤慨すべきか分からない状況でフツフツと笑いが込み上げ、ついに噴出した俺は笑いこけて、降りるべき駅で降り損ねていた。
そんな調子で、道でばったり出くわした未知的生物(性別はナシ)という認識に近い女と偶然にも再会したのはそれから数日後。
仕事帰り「今日暇なら呑みに行かない?」と麻生に誘われ着いていったコンパの席で。