ツラの皮
人をかどわかすのが趣味らしい麻生に何を言っても無駄だと知りつつ、俺はかなり不機嫌になった。
短時間で初対面の人間の何を知れるわけでもなく、所詮外見が重視されるコンパなんてものが大ッ嫌いなのだ。
後で覚えてろよ麻生、と散々悪態を吐きながら部屋へ向かう途中
『大丈夫。会場に入ったらステキキャラ演じるんだから―――』
そんな言葉と共に目の前のトイレのドアが勢いよく開いて女が勢いよく飛び出してきた。
聞き覚えのある声。
見下ろす頭は数日前の記憶のとおりだ。
『すみません。余所見していて・・・』
だが、見た目は随分違う。
ヨレヨレの疲れた也は、しっかり施した化粧と服に取って代わり、
男を騙すに相応しい女の姿。
聞いたことのないようなよそ行きの声で謝られ、にわかに不快感が湧き上がった。
ああ、コイツも所詮見てくれだけで男を誑かすツマラナイ女だったんだな、と。