ツラの皮
麻生と入れ違いに別の女が近づいてきて、気のない相槌を打つのも億劫でトイレに立つフリをして部屋を抜け出した。
どこかで一服してほとぼりが冷めた頃戻るか・・・。
そんな逡巡をして人気のない階段のほうへ足を向け、女の声を耳にした。
『そんな卑怯よ!返すつもりでちゃんとバイトまでしてるのに―――』
どうやら借金があって、その返済について揉めているようだ。
って、借金て。
さすが規格外女。
だが、ブランド好きが高じてカードローン地獄……ってタイプじゃねーよな。
『・・・ほんと?今から行ったら本当にチャラにしてくれるの?』
思考を巡らせていた俺は漏れ聞いた言葉にぎょっとした。
オイ。バカ。
何を要求されてんのか知らんが、借金取りに呼びつけられて無事に帰れることなんざありえねぇぞ。