ツラの皮





『俺にしとけ。大切にしてやるから。』





対面だけを取り繕って行う恋愛ゲームを唾棄していながら、執念のように対面を飾ることを生業にして、


己自身、虚無の恋愛に身を投じていた捻くれ者のくせに、俺はコイツ相手には一度だってゲームを持ちかけたことはない。





駆け引きじゃなく言いたいことを言い合える相手だから。


騙すとかまるで出来そうもない上に騙すのもどうかと思うような無防備さと。


そのくせ無鉄砲な勝気さと。


なんもかんも含めて愛おしいと思うくらいにヤキが回っていたから。







一緒にいたい。


コイツがほしい。







『好きだ。』






それは演技を忘れた俺の本音。





だが、欲しいものを手に入れるためにそれまで培ってきた『魅せるオトコ』をフル活用したのは否めない。


ウカウカしている間に他の男のモノになるというのなら、演技だろうが雰囲気だろうが使えるものは使って全力阻止してやる。



手段なんざ構ってられるかっ。


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