ツラの皮
腰を上げ、声を掛けようとした矢先、建物から追っ駆けてきた声に先を越された。
「小早川センパーイ!」
聞きなれぬ苗字で呼ばれた鈴は少し面倒臭そうに駆けてきたコウハイらしき男を振り返る。
「お疲れ。何?ユウキ。」
「今から呑みに行きましょー。」
「ヤダ。」
軽い誘いを瞬殺。
「そーいうキブンじゃないんだもん。だって今日、私、凡ミス連発……エンジンかかんなくてテンション・ローなの。」
小さく溜息を吐くが、見た目体育会系のコウハイはまるで意に介さず。
無駄に清清しいのか暑苦しいのか分からない笑顔で溌剌と言った。
「知ってますよ!だから呑みに行くんじゃないですか。ぱーと呑んでテンションあげましょ。お付き合いしますって。」
「だからヤダって。普段の時ならいざ知らず、今日はアンタのテンションまで上げられないのー。」
「いいですよ。ボクが一人で盛り上がりますから!」