ツラの皮



「どちら様ですか?の前に小早川センパイを直ぐに放して下さい。センパイ、この方は誰ですか?」



コイツは……、と言いかけた鈴の口を首に回した腕で塞いでおく。




「俺はコイツのカレシだが、何か?」



「え!?」と驚きの声が重なった。


無論、鈴の声は俺の腕に阻止されて聞こえやしなかったが。







ショックも露に去っていく萎れた背中を俺は眇めた目で見送った。


ムカツク。


コイツに気があるのが諸バレだ。


好物を他人に物欲しそうに眺められて愉悦を感じる奴もいるが、俺は好きじゃない。


譲るつもりも負けるつもりも毛頭ないが、落ち着かないし鬱陶しいしで苛々してくる。





救いなのは、獲物が常軌を逸したズレ感覚の持ち主で、相手の想いにまるで気付いていないこと。


とはいえ気付かないままに絆されるというしょーもない性質なのでウカウカもしてられない。


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