ツラの皮
「も、とにかく放してよっ!」
鈴が俺の胸に手を突いて命一杯に押しやる。
緩んでいたこともあって鈴は思いのほか後ろへ仰け反り、蹈鞴を踏んだ。
「きゃ」
「何やってんだバカ。」
慌てて引き寄せ再び手中へ。
途端、カクンと膝を折り自ら俺に縋りつくことになった鈴を覗き込み、俺は眉を寄せた。
「オマエ、尋常じゃないくらい顔赤いぞ。」
一見してもチークじゃないなと分かる色で頬といわず肌が染まっている。
目なんか涙目でウルウルしているし。
そう言えば、心持ちいつもの威勢に欠けている気もする。
ひょっとしてさっき高熱といったものあながち嘘ではないのかもしれない。
「ぅ………そ、そうなの。ちょっと体調悪くて。」
鈴がチラっと上目遣いで俺の顔色を盗んで、慌てて目を臥せる。