ツラの皮
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「えと・・・送ってくれてアリガト。」
エントランスの前で鈴が呟くように言った。
顔には赤味が残っていて、臥せられても尚落ち着きなさそうに揺れている瞳は少し潤んでいる。
ったく、送り狼にも豹変出来ない状況下を見越したように、そういう貌すんな。
堪えかねて、エントランスの門を開けようとしていた手を上から覆って留める。
「ひっ!」
鈴は天敵に見つかったミーアキャットのように飛び跳ね、あからさまに仰け反って拒否反応を示した。
何なんだその反応は、流石の俺も傷つくぞ。
だが、それ以上にむっとした。