ツラの皮


アーチに手を突いて逃走路を塞ぎ、性悪の名に相応しい笑顔を近づける。



「俺に触られるのはそんなに嫌か。人をバイキンか何かみたいになぁ。」


「そ、そそんなわけ、なくて!・・・ホラ、私風邪かもだし?そーよ。移ったら申し訳ないでしょっ。」


「へーえ。」


「う、嘘なんて吐いてないわよ!アンタ相手に嘘なんて吐いたって仕方ないし!」





思いっきり硬直して、命一杯後ろへへばりついてるくせにか。


何はともあれ自分から追い込まれてくれてアリガトよ。





「それが本心なら気にすんな。俺はうつっても一向に構わねーよ。」



思考ダダ洩れよろしくシマッタ、ハマッタ!という顔をしたが、知るか。




今日はキスだけで大人しく引き下がってやるから、少しぐらい妥協しろ。





そっと顔を近づけると、鈴はぎゅっと目を瞑った。


鈴の分際で、初めてのキスに怯えるオンナノコみたいな初々しい態度で、何を雰囲気出してやがる。





キスだけの決断が早くも挫かれそうだ。



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