ツラの皮



「鈴・・・」





コッチこそキブン満天に囁いて顔を寄せる。


吐息の掛かる距離。



一思いに喰らいつこうか、という時に横槍が入った。





「盛り上がっているところを申し訳ないけど、通らせて頂けるとありがたいわ。」




少しだけ面白がっているような、それでも酷く冷静な声に俺が反応するより早く俺を突き飛ばした鈴が「おおおお母さん!」と絶叫した。



って、母親。


小賢しくも外堀から埋めていこうか、と機会があれば早々に挨拶を交わそうと思っていたが・・・タイミングが悪すぎる。




これ以上心象を悪くしてなるものかと、殊更真面目ぶった顔で頭を下げる。




「ハジメマシテ。清水高遠と申します。この度は鈴さんの体調が芳しくない様子で心配でしたので送らせて頂きました。」




鈴が本調子なら『アンタ気は確か?』と言われそうな仕事モードだ。




母親という女性が、普段俺がクライアントの上司として会うような貫禄が備わった人物なので違和感もなく言葉が出た。



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