ツラの皮
フォー
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尾瀬監督の映画の撮影が始まって、『通例どおり』順調に進んだ。
時代劇テイストの前回作品に対し、今回は昭和初期が舞台だったために化粧や小道具の類も用意しやすいのだ。
そして俺や麻生も成長している。
とはいえ、
『口紅ね、昭和の赤ね』とか
『髪の毛に昭和モダンな艶を足してくれ』
という程度の無体な要求は底をつかず。
麻生に至っては
『このワンピースはスクエアの襟ぐりがいいよ』
との一言でアチコチ駆けずり回るかサイアク自腕にかけて作り直している。
挙句
『ゴメン。これヤメル。』
と忍耐を試しているのかという台詞をあっさり言われて変更を余儀なくされる事も通例どおり、だ。
いつもは押し気味の撮影が珍しくスムーズに進んで、午前中に予定していたカットが時間を持て余して終了した。
役者陣が早々と休憩を取るのを尻目にスタッフは午後の撮影の支度に余念がない。
日常のカットが撮り終わって、今度はホームパーティーのカットだ。
豪華絢爛に魅せる場面にスタッフの士気は否応なく高い。