ツラの皮
「………ゴメンね。私のこと嫌ってるよね。私、貴方を傷付けた……。」
溜息しか出なかった。
鬱陶しいというか呆れるというか。
「別に。恨んだ時も確かにあったが、今は本当にどうとも思ってねーよ。だからそーいう態度取られるほうが寧ろ煩わしい。」
頼むから忘れてくれ。
過去俺にした仕打ちに罪悪感を抱いているというなら全て水に流してやるっつってんだから。
コチラの精一杯の誠意に、雪乃はきゅっと眉根を寄せて唇を噛んだ。
「……そっか。高遠もはもう私が関わる余地なんて残ってないんだよね。良くも悪くも高遠にとって私は『過去』なんだ。」
強い日差しを避けるように木陰に居る雪乃は、触れたら溶けて消えてしまいそうな優曇華のように儚く見えた。
イラッとして、途端に吐き気が込み上げてきた。
苦心してそれを飲み込み、冷静に言葉を紡ぐ。
「『その通り』だ。好意を抱くことはまずない。だけど嫌悪するほど関心もない。俺にとってオマエは仕事で関わっている女優。それ以下でもそれ以上でもない。」
「高遠には過去でも私は……」